歯が痛くなったり、メンテナンスのために歯医者に行くとき、あの独特な雰囲気に気後れすることはありませんか?特に、先の患者さんの治療から聞こえてくる機械の音や、鋭い器具がぶつかる音に不安を覚えることも多いでしょう。歯医者の待合室には、どこか緊張感が漂いがちです。
ある日、小児歯科も兼ねた医院に行ったとき、さらに衝撃的な体験をしました。深く考えずに選んだ病院でしたが、一歩中に入ると、耳をつんざくような子どもの泣き声が響き渡っていたのです。歯医者独特の機械音に加えて、子どもの泣き叫ぶ声が織り交ざり、不安と苛立ちが一気に押し寄せてきました。まさに、これまで経験した中で最も気が滅入る出来事でした。
今日は、その小児歯科での出来事を通じて、感じたことや経験したことについてお話ししたいと思います。
診療前の状況

その病院に入ると、待合室はまるで小さなテーマパークのように可愛くレイアウトされていました。壁には色鮮やかなキャラクターが描かれ、棚には絵本やぬいぐるみが、ところ狭しと並んでいます。(今なら、ちいかわなどがたくさんあるイメージです。)当時の子どもたちに人気のキャラクターが山積みされているのを見ると、この病院が小児歯科に力を入れていることがうかがえます。
待合室には、3組ほどの親子連れがいて、子どもたちは遊んだり、走り回ったりして順番を待っていました。その光景は、まるで託児スペースのようでした。しかし、子どもが苦手な私にとっては、その賑やかな様子がとても不安な要素に思えたのです。子どもたちの騒ぐ声に落ち着かず、来る場所を間違えたのではないかという気持ちがじわじわと沸き上がってきました。
しばらくして、治療を終えた患者が診察室から出てくると、次に名前を呼ばれた親子連れが入って行きました。すると、私の嫌な予感が的中したのです。治療の機械音が聞こえる前に、突然診察室から子どものかん高い泣き声が響き渡ったのです。耳をつんざくようなその泣き声。それに何かを感じた周囲の子どもたちが、同じように次々と泣き始めます。まさに、気が滅入るような大合唱が待合室に広がり、私はその騒然とした空間の中で、順番を待つしかありませんでした。
診療中の出来事

しばらくして、ついに私の順番が回ってきました。名前を呼ばれ、診察室に入ると、治療スペースが2つあることに気づきました。その瞬間、また嫌な予感がよぎりましたが、気持ちを切り替えて椅子に座りました。隣のスペースでは、ちょうど子どもの治療が始まったばかりでした。
すると、耳をつんざくような子どものギャン泣きが聞こえてきました。その声は、まるで私の神経を逆なでるかのように響き渡り、イライラが募るばかりでした。隣で奮闘するお母さんや歯科医師の苦労は十分理解できましたが、それでもこの状況に耐えるのはかんたんではありません。
ようやく子どもの治療が終わり、私の治療が始まりましたが、すでに泣き声に疲れてしまい、いつものように「無」の状態で治療に臨むことができませんでした。泣き声が耳に残る中で、集中しようとしても、気持ちが乱され続けるばかりです。
そんな中でふと、自分も子どもの頃に同じように泣いていたのだろうか、と昔の記憶を辿りました。しかし、私は泣くのを格好悪いと思っていたので、歯医者で泣いたことはなかったはずです。むしろ、歯医者に行くのを避けるために仮病を使ってまで治療を先延ばしにしようとしたことを思い出しました。
診療後の感想

何とか治療が終わり、待合室に戻ると、不安そうな目をした子どもたちがこちらをじっと見ています。私は、少しでも安心させてあげようと思い、「全然、痛くないよ」と声をかけると、子どもたちはにっこり笑ってくれました。
子どもにとって歯医者は、痛みや恐怖と結びつく場所です。特に、診察室から聞こえる泣き声が不安を大きくさせるのは無理もありません。もちろん、治療中に泣くことを責めるつもりはありませんが、少しでも辛抱できるようになれば、もっと楽になるのではないかとも思います。子どもたちには、恐怖を感じるのも無理はないと思いつつも、私は自分が子どもの頃、泣くのは格好悪いと思っていたので、つい同じような強さを求めてしまいがちです。
診察室を出て声をかけた時の子どもたちの笑顔に、少しでも安心してもらえたようで、私も少し救われた気がしました。
まとめ
歯医者が怖いのは、大人も子どもも同じです。しかし、こうした経験を通じて心が少しずつ成長していくのだと感じました。子どもたちの泣き声に気が滅入ることもありましたが、それは彼らの成長の過程での試練であり、私自身もその姿を見て学ぶことができました。彼らの未来が健やかであるように、私たち大人ができる限りのサポートをすることが大切だと改めて感じました。
haruka_moon著